誰もが幼少期に耳にした童話「桃太郎」。そのルーツは、この地を治めていた異国の鬼神「温羅(うら)」と、朝廷から派遣された吉備津彦命との激しい戦いに遡る。
境内の静けさとは裏腹に、伝承が伝える歴史は極めてドラマチックだ。犬飼部、猿飼部、鳥飼部という三人の家臣を率いて温羅を倒した物語は、単なるおとぎ話ではない。かつて大和朝廷に匹敵する独自の鉄器文化と巨大な勢力を誇った「吉備国」の服属プロセスを投影したものだと、現代の歴史研究者は分析する。敗者となった温羅の首が今も唸り声を上げているという伝説など、境内のあちこちに歴史の深層へと誘うヒントが散らばっている。