「AIが進化すれば司法書士は100%不要になる」という論調は、実務の法律構造を無視した典型的な誤解です。司法書士の本質的な役割は、単にパソコンで申請書を打つことではなく、「当事者の真正な意思確認」と「利害関係の法的な安全保障」にあります。
数千万円から数十億円が動く不動産取引の現場において、売主が認知症などで判断能力を喪失していないか、他人に強要されていないか、本人になりすました地面師ではないかを見極め、取引事故を防ぐ責任は極めて重いものです。万一登記事故が発生した場合の賠償責任も含め、法的な確定力を担保する「人間の司法書士による認証と責任の引き受け」を、AIが法的に肩代わりすることは法制度上不可能です。
また、弁護士との比較においても住み分けが成立しています。弁護士は「すでに揉めてしまった事件の裁判・交渉」を得意としますが、司法書士は「揉めないための仕組みを作る予防法務」に長けています。裁判沙汰になる前に適切な登記・契約・信託を設定して紛争を未然に防ぐコストパフォーマンスの高さは、多くの個人や中小企業経営者から強く支持されています。