本作の成功を足がかりとして立ち上がったスタジオジブリは、その後も一貫して人間と自然の相克を描き続けてきた。しかし、『もののけ姫』や『千尋』へと至る系譜の原点は、すべて風の谷の片隅で大ババ様が語ったあの短い警告に集約されている。
「人間は森を奪い、水を汚し、自らの首を絞め続けている」――大ババ様が告げた警告は、善悪の二元論では割り切れない。生きるためには自然を破壊せざるを得ず、破壊すれば滅びるという根源的な矛盾。宮崎駿はその問いに対して安易なハッピーエンドを用意しなかった。大ババ様の言葉が今もなお人々の胸に重く突き刺さるのは、彼女が未来への安易な免罪符を誰にも渡さなかったからにほかならない。