保育現場や家庭において、なぜ『バスにのって』はこれほどまでに子どもたちを惹きつけるのでしょうか。幼児発達心理学および小児理学療法の観点から検証すると、明確な2つの科学的要因が浮かび上がります。
1つ目は、「前庭感覚(平衡感覚)」と「固有受容覚」へのダイナミックな刺激です。耳の奥にある三半規管が感知する「傾く・揺れる・止まる」という加速度の刺激は、幼児の脳の発達に不可欠な感覚統合を促します。日常の静止した視界から一転、ジェットコースターのように景色が揺れ動く体験が、子どもの探求心と興奮を心地よく刺激します。
2つ目は、密着スキンシップによる「オキシトシン(愛情ホルモン)」の分泌です。大人の温かい太ももの上に乗り、背中や脇をしっかりホールドされることで、子どもは「絶対に落ちない」という安心感をベースにスリルを楽しむことができます。保育士や保護者への取材でも、次のようなリアルな証言が寄せられています。
「夕方のグズりタイムや雨の日の室内遊びで途方に暮れていたとき、この曲を歌いながら膝に乗せると、涙がピタッと止まって満面の笑みに変わる」(2歳児の保護者)
「保育園の集会で子どもたちの集中が切れかけた際、導入として『バスにのって』を歌うと、数十人の園児が一瞬で前を向いて一体感が生まれる」(勤続12年の主任保育士)