宮中における新嘗祭は、皇居の吹上御所近くに建つ神嘉殿(しんかでん)にて、張り詰めた静寂と蝋燭の明かりの中、約4時間半にわたって行われます。
儀式は夕方から夜にかけて行われる「夕の儀(ゆうのぎ)」と、未明から夜明け前に行われる「暁の儀(あかつきのぎ)」の二部構成です。天皇陛下は純白の絹で仕立てられた特別な装束「御祭服(ごさいふく)」を身に纏い、暖房設備のない極寒の殿舎で正座を崩さず、祈りを捧げ続けられます。
神前に供えられ、陛下自らも口にされるものは以下の神饌(しんせん)です。
- 新米・新粟:皇居内の生物学研究所脇の御水田で天皇陛下自らが田植え・稲刈りを行われた米と、全国から献上された米・粟。
- 白酒(しろき)・黒酒(くろき):新米から醸造された伝統的な神酒。黒酒には久木(クサギ)の灰を混ぜて黒く濁らせる古代の製法が守られています。
- 鮮魚・干魚・果物・海藻:山海の旬の恵みが神饌盤に美しく盛り付けられます。
古来、農村社会では「新嘗祭が終わるまではその年の新米を口にしてはならない」という厳格な戒めがありました。神様や天皇陛下が召し上がる前に人間が先に新米を食べることを慎むという、謙虚な感謝の念を表した風習です。現代の市場流通では新米が初秋から出回りますが、旧家や神社関係者の間では今もこの伝統を守り、11月23日を過ぎてから新米を開封する家庭が存在します。