発端は、成人向けビデオ産業を手掛けるコートコーポレーションが制作したビデオ作品『真夏の夜の淫夢』のワンシーンだった。出演していた無名の男は、2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)の住民たちによって切り取られ、瞬く間にネタの標的となった。当初は一部の悪ふざけに過ぎなかったものが、ニコニコ動画の台頭によって決定的な転換期を迎える。
MAD動画と呼ばれる二次創作の波に乗り、男の顔とセリフはネット空間の共通言語へと変貌した。やがてその熱狂はYouTubeなど海外プラットフォームへも越境し、世界有数のインターネット・ミームへと昇華する。本人の意志を完全に置き去りにしたまま、男は日本のサブカルチャー史における一種のアイコンとして定着してしまった。