ネット上の質問コミュニティやSNSでは、長期休暇のたびに「子どもの空想画を手伝っているうちに親子喧嘩になった」「親が描き直してしまい別人の絵になった」という悲鳴が上がっています。親としては良かれと思って「もっと綺麗に塗りなさい」「空を飛ぶ車を描いたら?」と助言するものの、それが子どもの自発的なイメージを奪ってしまうケースが後を絶ちません。
公立小中学校の図工専任教員は、取材に対して次のように現場のリアルを語っています。
「提出された絵を見れば、大人の作為的な手が入っているかどうかは瞬時に判別できます。整った線や大人が考えたスマートな未来都市よりも、たとえ線が歪んでいても『ぼくはここをこう探検したいんだ』という泥臭い熱量が詰まった絵のほうが、教育的評価もコンクール評価も圧倒的に高いのです」
スイスの心理学者ジャン・ピアジェの発達段階論が示すように、子どもは9〜10歳前後(いわゆる「9歳の壁」)を境に、主観的な自己中心的世界から、客観的なリアリズムへと認知が移行します。この移行期において、親が「現実と違う」「デッサンが狂っている」と大人の理屈で修正を迫ると、子どもは描くこと自体に強い苦手意識を抱いてしまいます。親ができる最大の支援は、手を動かすことではなく「どんな音が聞こえる世界なの?」「ここには誰が住んでいるの?」と問いかけ、子どもの頭の中にある空想のディテールを言語化させるサポートに徹することです。