歴史の糸を手繰り寄せると、この名物の起源は江戸時代初期まで遡る。慶長年間、府中(現在の越前市)を治めるためにやってきた初代家老の本多富正が、非常食としてのそば栽培を奨励したのがすべての始まりだった。当時、そばは挽き割りにして団子状で食べられることが多かったが、本多富正は栄養価と消化の良さに着目し、大根おろしを添えて食べるスタイルを考案・普及させたという。
合戦や飢饉に備えるための実用的な食糧政策が、400年以上の時を経て日本を代表する食文化へと昇華した。今日私たちが口にする越前おろしそばの一杯には、乱世を生き抜いた先人たちの知恵と歴史の重みが確かに息づいている。