危険な自覚症状がなく、単なる一過性の血圧上昇であると判断できた場合、物理的・神経学的に血管を緩める最も強力なツールは「呼吸のコントロール」です。
自律神経系の中で、人間が唯一意識的にコントロールできるのが呼吸器系です。推奨される血圧を下げる深呼吸とリラックス法は、心拍変動バイオフィードバックの知見を応用した「4-7-8呼吸法」あるいは「等リズム緩徐呼吸」です。背もたれにゆったり身を預け、鼻から4秒かけて深く息を吸い込み、7秒間息を止め(苦しければ無理に止めず2〜3秒)、口をすぼめて8秒以上かけて細く長く息を吐き出します。
息を「吐く時間」を吸う時間の倍以上に設定することで、胸腔内圧の変動を通じて迷走神経が刺激され、優位になっていた交感神経の緊張が強制的に鎮静化します。これを5分から10分間継続するだけで、血管壁の平滑筋が弛緩し、収縮期血圧が10〜15mmHg程度自然に低下することは臨床現場でも頻繁に観察されます。
呼吸と並行して厳守すべきが、家庭用血圧計の正しい測定方法の再確認です。測定時の些細なエラーが、実際よりも20mmHg以上高く表示させているケースが後を絶ちません。
第一に、「カフ(腕帯)を巻く位置は心臓と同じ高さ」でなければなりません。カフが心臓より低い位置にあると、水頭圧の影響で血圧は実際より高く測定されます。第二に、測定器は手首式よりも上腕に巻くタイプが格段に信頼性に優れます。第三に、椅子に座ってから「最低でも5分間の無言の安静」を置いてから測定ボタンを押すこと。測定中に会話をしたり、脚を組んだり、尿意を我慢しているだけでも血圧は10mmHg以上跳ね上がります。
急上昇を確認した直後は、直ちに再測定せず、上記のリラックス法を実践しながら最低15分から20分間静止し、呼吸と心拍が完全に落ち着いたタイミングで「1回だけ」測り直してください。そこで下降傾向が確認できれば、過度なパニックから脱した証左です。