ロンドン、ニュルンベルク、パリ。中世の暗黒史を展示の目玉にしてきた欧州各都市の博物館で、いま異様な光景が広がっている。これまで「16世紀の拷問器具」としてガラスケースの最前列に飾られていた梨型の金属装置が、次々と解説プレートを差し替えられ、あるいはバックヤードへと下げられているのだ。
「来館者のショッキングな反応を誘うための目玉展示だったのは事実です。しかし、歴史的実証性のないものを『中世の遺物』として展示し続けることは、学術機関としての誠実さに反します」。ニュルンベルク中世犯罪博物館の元上級学芸員、マルティン・ヘーガー博士は語る。2026年に入り、同館では所蔵する3点の装置について「19世紀に作られた複製品、または用途不明の装飾的金属器」と公式に表記を変更した。
この動きは一過性のブームではない。大英博物館やウィーンの犯罪史資料館でも同様の再評価が進んでおり、いわゆる「暗黒の中世」を象徴する花形アイテムが、学術的な検証の刃によってひとつひとつ解体されているのが現状だ。