物流の進化がもたらした恩恵は計り知れない。早朝に豊洲市場でセリ落とされたばかりの鮮魚が、午前中には駅地下の仕込み台へと直行する。仕入れから数時間で職人の手によって握られるネタのハリと透明感は、激変する外食産業の最先端を行くサプライチェーンの賜物だ。
しかし、素材の鮮度だけでは語れないのが江戸前寿司の奥深さである。小肌の酢締め、煮穴子のふっくらとした火入れ、赤身のヅケ。江戸時代から受け継がれてきた伝統的な仕事が、最新の衛生管理と輸送技術に裏打ちされた素材と出会うことで、かつてない高みへと昇華されている。短時間の滞在であっても、職人の丁寧な仕事は舌の上に確かな余韻を残す。