一般的には「スネ夫=肝付兼太さん」という印象が強いものの、アニメ史を厳密に辿ると、最初のスネ夫役は俳優・声優の八代駿(やしろ しゅん)さん(代表作:『トムとジェリー』トム役など)でした。
1973年4月から半年間、日本テレビ系列で放送された最初の『ドラえもん』は、現在のアニメーションとは制作会社もキャスト陣も全く異なる体制でスタートしました。この日テレ版において最もアニメファンを驚かせる事実が、「肝付兼太さんがジャイアン(剛田武)役を演じていた」という点です。
当時の制作資料や関係者の証言によると、肝付さんは豪快で乱暴なガキ大将であるジャイアンを熱演していました。しかし番組は局の事情等によりわずか半年で終了します。その後、1979年にテレビ朝日系列で装いを新たに『ドラえもん』が再アニメ化される際、オーディションを通じて肝付さんは「スネ夫役」として起用されました。
「かつてジャイアンを演じた役者が、数年後にその子分格であるスネ夫を26年間にわたって演じる」という巡り合わせは、声優業界における極めて稀有でドラマチックな転換点として語り継がれています。