北九州成人式のド派手衣装を目にした人々が真っ先に抱く疑問が、「あの莫大な費用はいったい誰が払っているのか」という点です。一般的な成人式の振袖レンタル相場が20万〜30万円程度であるのに対し、北九州のフルオーダー特注袴や花魁風スタイルは、装飾のグレードによって50万円から、高額なケースでは100万円以上に跳ね上がります。
ネット上では「どうせ親の金を浪費しているだけ」「不健全な見栄の張り合い」といった安易な批判が散見されますが、現場の取材から浮かび上がる実態はまるで異なります。新成人の多くは高校卒業と同時に地元企業や建設業、製造業などの現場に就職しており、18歳の成人年齢引き下げ以降も、20歳の式典に向けて1〜2年前から計画的に毎月の給与から天引き積立を行っているケースが主流を占めています。
大学生や専門学校生の場合でも、深夜のアルバイトを掛け持ちし、仲間同士で集まって連名で衣装を発注することでコストを抑えつつ、自力で費用を捻出する姿が当たり前となっています。彼らにとってこの費用は、単なる「服代」ではありません。10代の過酷な労働の結晶であり、無事に20歳を迎えた証を仲間と親に見せつけるための「自己投資」なのです。
取材に応じた建設作業員の男性(20歳)は、次のように語ってくれました。「高卒で働き始めてから、毎月3万円ずつ成人式用の口座に貯金してきました。総額で約70万円かかりましたが、親には一円も出させていません。むしろ、今日まで育ててくれた母親に感謝の言葉を刺繍した扇子を手渡すのが自分のゴールでした」。外見の派手さとは裏腹に、そこには極めて愚直で古典的な「自立の儀礼」が存在しています。