国語辞典『デジタル大辞泉』によると、「気違い(気狂い)」は大きく分けて2つの意味を持ちます。1つは「精神状態が普通でなく、正常ではない言動をすること。気が狂うこと」、もう1つは「一つのことに異常に熱中し、常軌を逸している人」です。
語源を歴史的に遡ると、「気(精神・意識)」が本来あるべき状態から「違う(逸脱する・狂う)」という構造から成り立っています。中世の能楽や歌舞伎などの古典芸能においても、我が子を失って狂乱する母親を描いた「狂女物(きょうじょもの)」などに代表されるように、「気が違う」という状態描写は人間の情念や極限の心理状態を表す言葉として広く用いられていました。
昭和中期頃までは、特定の趣味や分野に没頭する人物を親しみを込めて「映画気違い」「野球気違い」と呼ぶ文化が存在し、名作漫画『釣りキチ三平』のタイトルにもその名残が見られます。しかし、言葉が精神障害者や精神疾患を抱える人々に対する蔑称・差別表現として機能してきた側面も強く、時代の変遷とともに否定的なニュアンスが色濃く定着していきました。