明治維新という未曽有の大変革期において、国家財政の再建と新通貨の発行は焦眉の急であった。新政府の財政権限を握っていた大蔵省の内部では、欧米の金融制度をいかにして導入するかを巡り、連日のように激しい議論が交わされていた。
この改革において、渋沢栄一の強力なパートナーとして影で糸を引いていたのが、大蔵大輔(現在の大蔵事務次官級)を務めていた井上馨である。井上は政治的権力を駆使して旧弊な官僚機構の抵抗を抑え込み、渋沢が構想する銀行設立の道筋を政治的側面から力強く後押しした。政界の硬骨漢であった井上と、実務と経済理論に長けた渋沢。この二人の強力なタッグが存在しなければ、制度の構築は数年、あるいは数十年遅れていたかもしれない。官と民が奇跡的に噛み合った一瞬の好機が、銀行創設という偉業を成立させたのである。