勘三郎の真骨頂は、保守的な伝統芸能の世界に風穴を開け続けたダイナミズムにあった。その象徴が、自ら立ち上げた仮設劇場「平成中村座」だ。浅草の隅田公園に江戸の芝居小屋を蘇らせ、さらにはニューヨークのリンカーンセンターやヨーロッパ公演まで実現。小屋の後ろ壁を開け放ち、本物の夜景や街並みを借景にする演出は、世界中の観客の度肝を抜いた。
現代劇のトップクリエイターとのコラボレーションも伝説的だ。劇作家・演出家の野田秀樹とタッグを組んだ『野田版 鼠小僧』は、古典の骨格に圧倒的なスピード感と言語遊戯を融合させ、歌舞伎を観たことがない若い観客をも熱狂の渦に巻き込んだ。「古典は現代を生きる生きた演劇である」という彼の信念が、旧態依然とした興行界の空気を根底から変えた。