時をさかのぼること十数年。まだ世間が「趣里」という名前を「水谷豊の娘」としてしか認識していなかった頃、彼女はある若手俳優と出会う。それが、後に数々のドラマや映画で主役を張ることになる中村倫也だ。二人の出会いは舞台での共演だった。互いに演技に対する妥協なき姿勢を持ち、表現者として強く惹かれ合うまでに時間はかからなかったという。
当時の二人は、決して恵まれた環境にいたわけではない。家賃を折半し、狭いアパートで同棲生活を送っていたとされる。売れない役者同士、明日の仕事も分からない不安の中で、互いの存在だけが唯一の救いだったのだろう。深夜まで台本を読み合わせ、演技論を戦わせる日々。その泥臭くも純粋な時間が、現在の趣里の骨太な演技の土台を作ったことは想像に難くない。